2023.05.08
<2025.11.17 学校だより119号から>
この夏のある夕方、近くに住む年老いた母が紙袋を手に、私の家を訪ねてきました。紙袋の中には、私の古い通知表が入っていました。どれも黄ばみやシミがあり、長い年月を感じさせます。
小学生の私は、通知表をもらうたびにいつもドキドキしていました。なぜなら、そこには毎回のように「落ち着きがない」「人の話を聞けるとよい」などの言葉が並んでいたからです。数十年ぶりにその通知表を開いてみると、やはり同じ言葉が書かれていて、母に注意を受けた日の記憶がよみがえりました。けれども母は、この日は小言を言うこともなく、「大事にとっておいたんだよ」とだけ言い残して帰っていきました。私も、もうそんな言葉に静かにうなずける年齢になりました。
懐かしい思いとともに順に目を通していきました。5年生の通知表を手にしたときです、担任だった長谷川先生のことを思い出しました。先生は、それまでの先生とは少し違っていました。一斉にやり方を教えて練習させるのではなく、自由な発言を促し、一人一人の感じ方を大切にしてくださる先生でした。意見が違っても間違いとは言わず、どんな発言も温かく受け止め、結論は私たち自身に考えさせてくれました。そのため、教室には安心感と活気が満ち、学ぶ意欲とクラスの絆が次第に深まっていきました。当時、級友をからかうようなこともありましたが、次第に互いにそれを許さなくなり、クラス全体が変わっていったことを覚えています。長谷川先生のおかげで、私たちの中の何かが確かに変わったのです。わり算が苦手で勉強もあまり好きではなかった私が、自分からノートをまとめたり、算数を楽しめるようになったのも、先生の授業のおかげでした。自分の力で解決する体験を重ねるうちに、学ぶことの面白さを知ったのだと思います。
今思うと、長谷川先生の授業こそ、私の理想の教員像そのものでした。
こうした授業のあり方は、昔から大切にされてきましたが、今の時代にはいっそう求められています。変化の激しい社会を生きる子どもたちには、仲間と協力しながら未知の課題を解決していく力が必要です。その力を育てるのが、一人一人の考えを大切にしながら学びを深め合う「個別最適な学び」と「協働的な学び」です。
令和8年1月11日(日)、日和山小学校では「全国算数授業研究会新潟大会」が開催されます。この研究大会は、筑波大学附属小学校の教員を中心に、毎年各地を持ち回りで開催されており、全国各地から300~500人の教員が集まります。「楽しく、わかる授業」の在り方を探りながら、研究授業を通して互いに学び合う場です。会場となる日和山小では、全学級が研究授業を行い、子どもたち全員が参加します。授業を行うのは全国の算数教育の専門教員ですが、2年2組池田学級と5年1組近藤学級では、日和山小の担任自らが代表として授業を行います。子どもたちが当日、いきいきと学び合えるよう、全職員が日々研修を重ねて準備を進めています。
日和山小学校の教職員は、一人一人の子どもが自分の考えを発し、その考えを大切にしながら、互いに力を合わせて課題を解決していくそんな「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な推進を通して、深い学びの実現に挑み続けています。